Home | Reports Index に戻る 増尾好秋Webサイト

[← 前のライブの記録]  [次のライブの記録 →]

June - July 2004 Japan Tour


※当ページの更新:Jazz Bird と J   追加  2004/ 8/21

6月25日 at 昭島市公民館小ホール in Tokyo  [ツアー初日]

040625aki_0.jpg (34848 バイト)
 本田竹広(p), 増尾好秋(g), 岡田勉(b), 本田珠也(ds)
 東京都昭島(あきしま)市で年二回、毎回出演者を変えて開催される恒例のジャズライブの32回目だそうだ。前売り券は完売。観客の大多数は、常連ともいえる地元の方だった。会場は、小ホールとはいえ、中ホールと呼びたい広さ。ステージが小高く、客席スペースの各テーブルにはテーブルクロスがかけられ、オードブルの皿もある。ホテル大広間を思わせる雰囲気の中で開演を待った。このとき、増尾さんが客席に来てくださり、思いがけない場面での3年半ぶり対面となった。リハーサルらしいことを「何もやってないんだよ~」と困ったように苦笑される。やっぱりそうか。 これから曲を決めないと、と控え室のほうへ向かわれた。
 司会のバードマン幸田さんが出てきて、簡単な紹介のあと、いよいよ演奏が始まるかと思ったら、準備にもうちょっと、というわけでしばらく幸田さんと増尾さんの昔話タイムとなった。ちなみにお二人は同じ大学のジャズ研部員。
 さて、ステージ構成は、1stセットも2ndセットも、最初ピアノなしのギタートリオで2曲やってから、以降本田竹広さんが加わるという形だった。サウンドチェックが念入りだったそうで、会場の音が良く、広いのに各楽器の音を生音に近い感じで聴くことができた。音像をくっきりと感じ取れる空間とでもいえばいいか。少なくとも私の座席位置ではそうだった。
 演奏は、いきなり集まったメンバーなのにリハ無しなので、バンド全体がどことなくしっくりいっていない感はあった。たとえば増尾さんのオリジナル曲 Wet Dog では、ピアノの本田さんが最初譜面を追うのに忙しそうだったりするし、…というわけで、ノリノリの熱さを期待した人には、この強力な顔ぶれのわりには今ひとつ物足りなかったかもしれない。
 
 でも、聴かせどころはあった。ディズニーの「星に願いを」や、ジョビンの「トリステ」などを美しくしっとりと歌い上げるギターは、あるときはキラメくようにささやき、あるいはツーーと気持ちよく伸び、あるいは深く柔らかく響き渡った。あれ? 以前もこれほどまでに一音一音が表情豊かだったっけ? 聴き慣れたライブハウスとは違う会場だし、PAがよくて微妙な違いがわかりやすいから自分がそう感じるだけなのか?あるいは久しぶりに聴く増尾さんの生音に単純に興奮してるせいとか?(いや、まさか) (答えは7月5日DUGの文↓に) とにかく素晴らしかった。
 それに、本田竹広さんのピアノ、なんだか知的でクールに感じる。こんなピアノを弾く方だったっけ? 情熱の赴くままに…というイメージがあったけど。今日のこれは、ギターとのバランスに気を払っているせいなのか?抑制がきいている感じだ。それでいて存在感はしっかりと主張している。私は今日の本田さん好きだな。「ドルフィン・ダンス」や「トリステ」などでのピアノは冴えていて何度となくハッとさせられた。
 特筆したいのはアンコールの1曲目にピアノとギターだけで演奏した You Are My Everything。フロントとバックを交替しながらお互いの音を探るように絡めていく様はまさに絶妙。何度も息をのんだ。私にとってはこの美しいデュオ 一つだけでも昭島まで足をのばした甲斐があった。
 このツアー初日は、熱く盛り上がるという感じではなかったけど、随所で さすが!と思わせられ、嬉しかった。久しぶりに目にする増尾さんのギターの調子はよさそうに見えた。まだまだこれから何回か聴けるから楽しみだ。 (K)

6月29日 at Body&Soul and 6月30日 at Jirokichi  [トリオ+pf と ts のゲスト]

メンバー:増尾好秋(g), 本田竹広(p), 峰厚介(ts),
岡田勉(b), 村上寛(ds)

040629bs_honda.jpg (14943 バイト)
↑本田竹広(p) at B&S

040629bs_2nin.jpg (29886 バイト)
↑岡田勉(b), 増尾好秋(g) at B&S

 大御所 勢ぞろいの豪華メンバーでの二連夜。 ボディ・アンド・ソウルでも ジロキチでも超満員となった。一日目もそれなりに楽しめたが、二日目でバンドのパワー全開となり、いっそう濃密な演奏が展開された(一日目に行かれた方にはなんだか申し訳ない気持ち)。

 6月29日ボディ・アンド・ソウルでの様子は、マスター横田さんがご自身のサイト「ジャズ喫茶えすえふ」内のジャズライブページに書かれている。(横田さん、ありがとうございます)

 6月30日のジロキチは、ジロキチ30周年 "Sound of Superstars" 月間の最終日にあたるライブ。店にはいると、テーブルが取っ払われて座席が詰め詰めに並び、あとは立ち見スペース。私は長時間並んで買っておいた前売り券のおかげで最前列に陣取らせていただいた。
 1曲目、ギタートリオでの演奏からいい! ギターソロ素敵。ギターとベースの会話が楽しい。うん、今日はいい感じだぞ。3曲目の Dolphin Dance から本田さんが、4曲目の Wet Dog からテナーの峰さんがゲストとして加わる。Wet Dog のテーマを、ホーンとギターがユニゾンで、あ、今度はハモッた。 ヒロシさんのドラムスがビシバシ決まる。メンバーの演奏が昨日よりかみ合って、バンドの一体感がある。少し遅れて来た客で立ち見スペースはぎっしり埋まり、超満員。いよいよ熱気がこもってきた。

040630jiro.jpg (42733 バイト)
岡田勉(b), 峰厚介(ts), 増尾好秋(g), 村上寛(ds) at Jirokichi (リハーサル時に大橋氏が撮影)

 ギターは、シングルトーン、コード、オクターブを織り交ぜて次々とフレーズを繰り出す。何しろ目の前なので、コードを押さえる指がもの凄い速さで移動したり、ポジションが大きく飛んだり激しくスライドしたりするのを観るだけでも迫力があった(とはいってもテクニックを見せつけるための演奏は決してされない)。それに、昭島で感じたのと同じく、この日もギター音の表情の豊かさと素晴らしさを改めて感じた。
 2nd セットも半ばまで進み、次の曲の譜面を探す本田さん。見つからない様子。さっき鍵盤を叩く振動で床に落ちた譜面に気付き、拾いながら「あぁ、これを演るんだよ。」 どの曲かと思ったら、始まったのは増尾さんのオリジナル Sonny Side Up だった。おぉ! これを演ってくれるのはいったい何年ぶりか。峰さんのテナーが豪快にテーマを吹き、ギターもユニゾンする。爽快。この曲は、Sonny Rollins に捧げて増尾さんが書いたオリジナルで、過去にロリンズと演奏されたり、渡辺貞夫さんと演奏されたりしたもの。今度は峰さんと聴けるのが嬉しい。(右へ続く)
 次は、前月亡くなったエルビン・ジョーンズに捧げてこのところ毎回演奏されている増尾さんのオリジナル曲、E.J.。本田さんのアドリブソロがテンション盛り上がってきたところで、ヒロシさんの先読みドラムがダダダンとピアノに合わせて揃い打ち。決まった。客席すかさずかけ声と拍手。以降、リズムの合わせごっこ。うっかりしてるとどちらが先に仕掛けたかわからない。楽しい。客席の反応のいいこと。私も声を出しやすい。ステージとの一体感を味わう。
 本田さんは、昭島の日と違って、だいたい私の持っていたイメージらしい本田さんに戻って素晴らしいピアノを聴かせてくれた。本田さんサイトのNocoさんにひと言で言わせると「夜空に神々しく煌めく星のよう」だった。(→ 本田竹広さんサイトのReportsもにも両日の模様)
 ジロキチ30周年月間の最終日を飾るにふさわしい、店全体が熱気に包まれたライブだった。 (K)

7月5~17, 24, 31日 in 東京・名古屋・四国・横浜・北海道 [ギタートリオ]

メンバー:増尾好秋(g), 岡田勉(b), 村上寛 (ds)
 5日 新宿DUG でのギタートリオ。メンバーは岡田勉(b) さんと村上寛 (ds) さんである。ツアー始めのライブでは、ギタートリオにピアノやサックスがゲストとして加わる形だったが、この日からトリオで出演。
 それまでの3回のライブでも一部の曲をトリオで聴いて、調子が上がっているように感じたので、期待して行ったが期待以上だった。バラエティに富む曲目を、たっぷり楽しませてくれた。オリジナル曲Wet Dog も、そしてなんと、E.J. までも演ってくれた。E.J. という曲は、テーマの白玉音符のすき間を音で埋めてグルーヴを出すのが難しそうに思っているが、それをたった3人で演っても迫力があった。おまけにこの日は、セカンドセットの最初にドラマー渡辺文男さんがsit in して、Tenor Madness と Lush Life の2曲を叩いてくれたし。
 素晴らしい演奏が続いたあと、仕上げにアンコール曲のギターにもぶっとんで目から興奮の汗を出してしまった。(右へ)
 さて、ツアー初日に増尾さんの演奏を久しぶりに聴いてハッと気付いてから、ずっと気になっていたことがある。すでに少し触れたことでもあるが。ツアー二回目のライブハウスで確かめようと思ったけれど、その日にはちょっと自信がなくなって、でも次のジロキチでやっぱりそれを感じた。4回目、DUGでギタートリオをじっくり聴いて確信に至る。もうここに書いちゃう。増尾さんの音、3年半前とは変わった。 変わったというより、表現の幅が広がったというか、音に表情をつけることに磨きがかかった。柔らかい音が徹底的に柔らかくなった。だから硬めの音から柔らかい音までの幅が大きい。響きのもっと細かいニュアンスも含めて、自由自在って感じ! いろいろな音が出せるからといって必要以上に音色を変えてみせるような演奏は決してしないので、場合によってはそれに気付きにくいのだが。とにかく前には出せなかった音も出している。 これはもう誰にも真似できないと思う。 (K) 7月6日記

※後で聞いた話では、やはり増尾さんはピッキングの技が進化していた。 これについて Guigar コーナーのインタビュー(3) にちょこっとだけ追記した。
 7日 六本木 alfie 七夕の日。なんてことをほとんど忘れていたら、増尾さんに思い出させられた。 「 七夕 星に願いを ☆彡」 。オルゴールのようなかわゆい音やハープのように深く みずみずしい音など、とても1本のギターで出しているとは思えないような、そんな色とりどりの音色をフレーズに織り込むように奏でていく。「うつくしい~」 客席から声がもれた。
  この日、ツアーが始まってはじめてボーカルが飛び出した。曲は「The Way You Look Tonight (今宵の君は)」。ここではギターがとっても気持ちよく歌いまくっていた。
 セカンド・セットは最後のほうに、アルフィーのママの亡き旦那様、日本のトップ・ドラマーだったトコさん(日野元彦)と、エルビン・ジョーンズの二人に捧げて「E.J.」が演奏された。
 アンコールでは「ノー・モア・ブルース」をスキャット入りで。なぜだか、声を出すとギターもいっそう歌うような気がする。増尾さんらしくナチュラルにのびのびと歌っていた。(K)
emu さんの感想:

どどさんのアルバム『 DODO 』 『 116 WEST 238 St. 』のプロデューサー、 ギタリストの増尾好秋さんのライブで久々に alfie に行ってきました♪
そのギターの音色の美しさは『 七夕 から 星に願いを 』で世界中の願いが叶ってしまいそうでございました。
そしてあの甘い歌声と alfie のママ曰く
「 ますおちゃんはかわいいの! 」
な、スーパースマイル☆で、椅子からトロケて流れ落ちたemuでした。(*^。^*)
いや~、顔がほころんだまま元に戻りませーん!!!ステキだったよ~。

(emu さんの「emu's cafe」サイトより.)

 24日 横浜 Jazz Is by 山中弘行 (掲示板より)

 (冒頭略)当夜は(取材で)楽器やアンプの試奏をお願いしていたので、ファンの方たちと増尾さんが触れ合う時間を横取りしてしまったようで恐縮しています。
 昨夜のJazz isは普段以上に大盛況で、マスター(今井さん)に伺ったところ、常連の方以外のファンの人たちが多く聞きにいらしてたようです。そう言えば、何本か場所を尋ねる電話も入っていました。
 今回の来日で初めてお話をさせていただいたのですが、言うまでもなく、増尾さんはギタリストととして素晴らしい方です。それ以上に人間的におおらかで、気さくで、実に温かな人柄に驚きと尊敬を憶えました。
 gigは岡田さんと村上さんとのトリオで、ツアーの最終節ということで、息の合った、軽妙なやり取りが演奏の中で交わされる、素晴らしい演奏でした。中でも第一部で演奏された「Estate」は、小さな音量で繊細に弾かれたバラードで涙が出るくらい優しく、せつなくなる演奏でした。

 第2部のハイライトは「All Blues」。マイルス作のGmのブルースですが、ここでは一転してイマジネイティブで柔軟なテーマ表現でスタートし、Soloでは幾何学的なフレーズを多用したモード表現でとても力強く、自由な演奏が展開されました。
 「永遠の好青年」増尾好秋さんは、今尚進化し続けています。実はこんなに純粋に楽しめる「ギタリスト」の演奏に出会えたのは、とても珍しいことなんです。ギターを弾く者がギターの演奏を聞くときは、どうしても奏法や技巧に注意が向けられるからです。
 「もっと聴いていたい!」「ずっと増尾さんのそばに居たい(危ない意味ではありません)」そんな気持ちになりました。
 それにしても、女性の聴衆方々に贈られたアンコールでの弾き語りは、素敵でしたね。

Taste of Jazz  山中 弘行
※山中氏はプロのギター奏者でもある

7月25日 日比谷 野音 Jirokichi 30周年 Blues and Jazz Explosion in Hibiya

 杉並区高円寺にあるライブハウスJirokichi の30周年を記念して、全体で5時間を4部に分けて総勢三十数名のアーティストが出演するという お祭り的コンサートである。会場である通称「野外音楽堂」は、実は「日比谷公園大音楽堂」という正式名称だったということを、これを機会に知る。

 開演3時の直前に会場に入ってみると、ほぼ満席だった。前売りチケットの売れ行きが発売当初は思わしくないようだったが、当日が近付いてから新聞やテレビで取り上げてもらったことが奏功したのだろうか。よかった。

 それにしても暑い。数日前に39.5度Cという暑さを記録したばかりの東京は、今日も気象観測で34度C近くあり、会場のコンクリート座席は焼け込んで水を掛けたいところだ。 が、ベンチ型であるため隣の人にひんしゅくをかいそうで思いとどまる。ただ、日差しは薄曇りはじめたおかげで多少は和らいでくれているのが、せめてもの救いだ。

 第1部はブルース系のステージ。ドラムスとベースの音圧がもの凄い。野外ってこんなもの? ボーカルもばっちり聞こえるが、片山広明(ts)、梅津和時(as) のサックスがかき消されるようだ。ジャズのセットもPAがこんなだったらどうしようと心配になってしまった。 

 第2部は、本田竹広(p)、坂田明(ts)、福村博(tb)、森園勝敏(g)、大西真(b)、佐野康夫(ds) という顔ぶれに、宮本mimi典子(vo)、金子マリ(vo) という二人のボーカルがステージの華となった。途中、曲の導入部分で本田さんがソロピアノを弾いたときだけは、場内の空気が一瞬引き締まった。

 第3部は、増尾さんも登場するジャズのセットだ。まず、峰厚介(ts)、増尾好秋(g)、三好"3吉"功郎(g)、バカボン鈴木(b)、古沢良治郎(ds)、ヤヒロトモヒロ(perc) で2曲。次に山下洋輔(p)さんと元憂歌団の木村充揮(vo,g)でデュオを1曲。そして最後に全員で1曲やった。PAは、このセットでは楽器のバランスが大丈夫だった。ホッ。増尾さんのギターはあの大スピーカーを通しても、ちゃんと増尾さんの音だった。客席から「マスオ~ッ!」のかけ声がかかる。2曲目(峰さんの"レッド・ベスト")で増尾さんのとったソロが私には印象的だった。峰さんのサックスも、いつものそれだった。久しぶりに聴いた山下さんのピアノはやっぱり凄かった。ソリッド ギターで登場の3吉さんと増尾さんのツインギターも楽しめた。最後の全員でのサマータイムは圧巻で、ノリノリだった。当コンサートのための臨時編成でありながら、事前の公開リハーサル セッション ライブに山下さんが参加できなかったわけだが、そこは山下さんだけデュオ演奏にまわるという形で、うまく構成したと思う。このセットはなかなか良かった。
040725yaon.jpg (43553 バイト)
三好"3吉"功郎(g), 増尾, 峰厚介(ts)  Photo by 大橋 氏
(ところで、いくつかの筋から後日得た情報によると、このコンサートで初めて増尾さんを観たというジャズファンにも、増尾さんは好印象を与えたようだ。)

 第4部、Jirokichiマスターの荒井ABO誠さんがオーストラリアの原住民アボリジニの民族楽器「ディジュリドゥ」で登場。異世界を思わせるような強烈なリズムが展開される。途中からボーカルの近藤房之助とCharが登場。Charが、ジロキチ30周年を祝うことばをギンギンのロックに乗せて歌い、客席は少しずつ立ち始めた。最後は控えのミュージシャンもステージに出てきた。客席のうちステージに近いあたりはディスコと化した。多くのミュージシャンに祝福されて、荒井さんは挨拶で感極まったようだった。荒井さん、コンサートの成功とジロキチ30周年おめでとうございます。(K)

(←第3部は5時~6時頃でまだ明るかった)

 

7月26日 Jazz Bird [with 安ますみ(vo)]

安ますみ(vo), 岡田勉(b), 増尾,
(もっと右に村上寛(ds))
Photo by
大橋 氏   

Jazz Bird.jpg (25923 bytes)
 安ますみ(vo) さんは、この秋ニューヨークへ飛び、増尾さんの The Studio で自身のアルバムをレコーディングすることになっている。それでこのようなライブとなった。
 私は、ステージから一番遠いカウンター席だった上に、その辺りはにぎやか(?) だったため、残念ながら安さんのトークも聞き取りにくかったのだが、何やらアルバムでは日本の歌をやりたいのだとか。 ただし、この日はジャズのスタンダード ナンバーだった。
 My Favorite Things, Summer Time, Summer Knows など、ほかの日の増尾さんライブでは聴けないような曲が聴けた。しかも、カッコイイんですわ、これが。
 3セットあって、私は2ndセットまでしかいられなかったが、各セットの始めにボーカルなしのギタートリオでも何曲か演奏した。この日は行って大正解だったなぁ。
 ただし、ステージに近くて音のしっかり聞こえる席を予約で確保しておかなかったのは自分として失敗(涙)。
 ニューヨークでの安さんのレコーディングは、最近増尾さんがよく一緒に演奏している ビル・メイズ (p) トリオと増尾さんがバックをつとめる予定とのこと。こりゃ凄いメンバーですぞ~  2005年1月発売予定。 楽しみ、楽しみ。

 

7月28日 Jazz Spot J [with 渡辺貞夫(as)]

「J25周年記念超特番:増尾好秋(g), 鈴木良雄(b), 村上寛(ds)  特別ゲスト:渡辺貞夫(as) 」
…と発表されるや、予約いっぱいでたちまちSOLD OUTになった。1か月前でチャージも未定のうちに"売り切れ" なんて話があっていいのだろうか? (チャージは結局ドリンク別で6000円。出演者と店のキャパにしてはお得だった) この4人は 1970年後半の渡辺貞夫グループである。同グループはそれまでドラマーが渡辺文男や角田ヒロなどいろいろ変わって、最後に村上寛になった後、解散した。猛然とスイングしていた人気バンドの、一夜かぎりの再結成なのだ。SOLD OUTのせいでこのライブをやむなく断念した人も多いようだった。ほんとは、このメンバーでの演奏をもっと多くの人に聴いてほしい気がするが。(ちなみに私は30数年前の渡辺貞夫バンドを生で聴いたわけじゃなく、数年前に貞夫さん、増尾さん、チンさんらが J で演ったときに聴いた。バップ中心に吹きまくる貞夫さんは貫禄と気迫に満ち、特にセカンドセットで津波級の衝撃を浴びて、貞夫さんの真の凄さを初めて体験したような気がしたのだ。まぁ、いくらこのメンバーとはいえ、いつでもそんな演奏になるとは限らないが。)(右上へ)  さて、ステージのほうは、演奏が始まる前に、増尾さんに請われて J のバードマン幸田さんがマイクのところまで行ったものの、もう説明の必要がないと思ったか、メンバーの名前を紹介する程度にとどまった。あとは、増尾さんも曲名を言うこともなく、ひたすら次々と演奏していくのだった。最初、All the Things You Are から。次にパーカーの Cheryl。私のわからないものも数曲あったが、スタンダードが中心で、それに貞夫さんの曲やチンさんの曲だった。Lament, If I Should Lose You, It's You or No One, A flat Blues, カーニバルの朝‥‥とまあ、バラードあり、ボサノバあり。
 貞夫さんの風格のある音。それに絡むギター。どっしりと貫禄の安定感を与えるベース。そしてヒロシさんのドラムが、切れ味よくシャープで気持ちよかった。久しぶりに集まったはずだが、いかにもなじみのメンバーという感じ。極上の味わいだ。
040728j.jpg (32660 バイト)
渡辺貞夫(as), 鈴木"チン"良雄(b), 増尾(g), 村上寛(ds)
リハーサル時に大橋 氏が撮影
 ある曲では、ギターはテーマを吹くホーンとユニゾンするかと思うとメロディーから離れ、離れたかと思うとまた寄り添う。つかず離れずでホーンと戯れるこの感じがたまらない。増尾さんのギターは、ホーンのバックで刻むコードが素晴らしいことは言うまでもないが、後ろに控えてばかりはいない。ときとしてホーンのフレーズにまるで遠慮なく切り込み、大胆に絡んで行く。これはこの二人であればこそだろう。長年の相棒のような感じでもあり、相手に敬意を払いつつ張り合っているようでもあった。チンさんの曲 Wings の出だしでは、指弾きのギターが美しかった。貞夫さんの曲 Episode での6/8拍子のアップテンポな演奏は特にスリリングかつエキサイティングで4人とも素晴らしく、増尾さんとチンさんが顔を見合わせて微笑んでいた。 というか、アイコンタクトはもう4人でしょっちゅうだったわけで。どの曲も、どこを切り取っても素晴らしく、あっという間に時間がすっとんで行くように感じられた。名残り惜しくて もっともっと聴いていたかった。(左下へ)
 ステージから離れた席ではわかりにくかったかもしれないが、こんなこともあった。
-- その1:次に演奏する曲に迷った増尾さんが、貞夫さんのほうをうかがい、マイクをはずして何か言った。貞夫さんは「(そっちが)バンドリーダーだから」と笑って返す。(え、そうなの?)
-- その2:貞夫さんが、チンさんの曲をやるとき譜面を見ていたが、途中から見えにくそう。テーマを吹きながらのぞき込むように顔を近付けた。どんどん腰をかがめて眼を近付いていく。が、最後の小節の音符はとうとう読み切れなかったようだった。その曲が終わると、苦笑しながら「(譜面が)後半 読めなくなる」。客席もドッと苦笑。

《客席ウォッチ》 私は気付かなかったが、内田修先生がみえていたそうだ、またカウンターのところににはピアニスト ケイ赤城さんの姿もあったとのこと。ステージの貞夫さんに近い壁際の最前列には、貞夫さんのお知り合いらしき方々がいらして、貞夫さんはソロを吹き終えるとそちらにいって笑顔で何やらちょこっとささやいたりされていた。
 私と相席になったのは、身だしなみも美しく整えた女性3人。開演待ちや曲の合間に彼女らが話している。 「(某サックス奏者)Mさんから、渡辺貞夫が出るって聞いたのよ。」 耳寄り情報をコネ?でいち早くキャッチして席を確保できたことにご満悦のようす(そりゃ 喜ぶに値しますとも)。 「やっぱり素晴らしいわね~」など、貞夫さんのことばかり口にしていた。 一度だけ、一人がポツンともらした。「ほかの人たちも上手ね。」 (はいはい、よくぞ気付いてくださいました) 連れの二人はこれには無言だった。(苦笑. 勝手にネタにしちゃってすみません! やっぱ最初に幸田さんが少しは説明されたほうがよかったかも?)  
 一方、ライブがひけてからチンさんと談笑していた別の3人の女性。「ほんっとに素晴らしかった!」 「ひとりずつでも凄いのに、それが集まったんだから、これはもぅ~凄いわよ。」 私が増尾さんのHP管理人と知ると「じゃ、そう書いといて」と言われた。 ありがとうございます。

《終わってから》 増尾さんが笑顔で言う。「僕は貞夫さんのバッキングならいつでも演るから」と。 そういや、以前にもそうおっしゃってたな~ あれ? チョット待った。 "貞夫さんのバッキング" って言ったって増尾さん、今日は増尾さんのトリオに貞夫さんがゲストでしょう? まあでも、私たちもけっこう貞夫さんバンドのつもりで聴いてたりするわけだし、それでいいか。 「サダオさんがメガネをかけたくないっていうんで、譜面を読まなくてもよさそうな曲ばかりにしたんだ。」 そういえば、増尾さんの曲は1曲も演らなかった。チンさんの曲を演ったのは、1か月前に同メンバーで2曲レコーディングしたばかりで、サダオさんもわりと覚えてるというわけか、なるほど~。 実は、リハーサルでは増尾さんの曲 Small Steps もやったのだ。  もしかして、メガネをかけてたら もうちょっと自由に思い切り演れた部分もあったのだろうか?  どっちにしろ、今日はこういう選曲で私は満足。 ピアノの上に広げられている譜面をみたら、増尾さんの Wet Dog、The Tree などがあった。"The Tree" は長いこと聴いていないな~。今回の日本ツアーで私の行かなかった会場で、この曲がひょっとして演奏されたのだろうか。

《さらにその後》 控え室がわりに貸し切りで使用していた向かいのお店で、ライブ終了後も上機嫌だった貞夫さんがいきなりピアノを弾き初めてジャムセッションが始まったそうだ。ベースを弾いていたチンさんが途中からピアノにかわり、貞夫さんが今度はドラムを叩き始めたりと、入り乱れてのセッションとなったとのこと。ただし、残念ながら増尾さんはこの時にマネージャー氏と事務的な打ち合わせをしていて参加できなかった。 久しぶりの再会をやはりミュージシャン自身楽しまれていたようだ。
 またいつか是非ともこのメンバーで演ってほしいし、その会場に自分がいられることを願う。(K)

2004年10月発売の 『Moon and Breeze/鈴木良雄』 に、このメンバーで録音された2曲が収録される。

 

Tour Dates (2004年6月~7月日本ツアー日程記録)

6/25 (金) 東京 昭島市公民館小ホール (増尾好秋g, 本田竹広p, 岡田勉b, 本田珠也ds)
6/29 (火) 東京 南青山 Body&Soul (増尾, 峰厚介, 本田竹広, 岡田勉, 村上寛ds)
6/30 (水) 東京 高円寺 JIROKICHI (増尾, 峰厚介, 本田竹広, 岡田勉, 村上寛)
ジロキチ30周年 Sound of Superstars月間 6/1~6/30 の最終日。なお 記念コンサートは7/25。
7/5 (月) 東京 新宿 DUG(増尾, 岡田勉, 村上寛)
7/7 (水) 東京 六本木 Alfie (増尾, 岡田勉, 村上寛)
7/9 (金) 香川県 高松 スピーク・ロウ (増尾, 岡田勉, 村上寛)
7/10 (土) 高知県 野市町 カントリーハウス (増尾, 岡田勉, 村上寛)
7/11 (日) 愛媛県 松山 Monk (増尾, 岡田勉, 村上寛)
7/12 (月) 徳島県 徳島 Goto's Bar (増尾, 岡田勉, 村上寛)
7/13 (火) 愛媛県 新居浜 サンジェルマン (増尾, 岡田勉, 村上寛)
7/16 (金) 名古屋 Jazz inn Lovely (増尾, 岡田勉, 村上寛)
7/17 (土) 名古屋 Jazz inn Lovely (増尾, 岡田勉, 村上寛)
7/20 (火) 東京 高円寺 JIROKICHI
増尾, 峰厚介ts, 三好"3吉"功郎g バカボン鈴木b, 古澤良治郎ds, 八尋知洋perc
 25日のコンサートの公開リハーサル的なセッション。
7/24 (土) 横浜 関内 Jazz Is (増尾, 岡田勉, 村上寛)
7/25 (日) 東京 日比谷 日比谷野外音楽堂 JIROKICHI 30周年記念コンサート
30th anniversary Blues&Jazz Explosion in Hibiya 全部で4セットのステージ。
開演15:00 ~ 終演19:30 雨天決行 全席指定 前売り5,000円 当日5,500円 (税込)
7/26 (月) 東京 南青山 Jazz Bird (増尾, 安ますみvo, 岡田勉b, 村上寛ds)
7/28 (水) 東京 新宿 Jazz Spot J (増尾, 鈴木良雄b, 村上寛. 特別ゲスト:渡辺貞夫as)
SOLD OUT!!  6月30日現在で既に予約のキャンセル待ちが数名という状況。
7/31 (土) 北海道 倶知安町 くっちゃんJAZZフェスティバル2004 (増尾 with 岡田勉, 村上寛)
くっちゃんJAZZフェスは, 7/31と 8/1の2日間。他の出演者など詳細は、Jazzフェスサイトへ。

 

Home | Reports Index に戻る

▲ Top of this Page