増尾好秋ギターインタビュー2000 by Sunshine Road (1)
インタビュー時にお持ちだったギターは、右フレーム内上、List 1 の[1]ギブソンES-175
■各リーダーアルバムの録音に使用したギター |
Sunshine Road: 増尾さんの古いアルバム順に、使用ギターをわかる範囲で書き出してみたんですけど。
増尾: そうね ...(手渡したリストを見ながら。 なお、このリストの修正版が右フレーム内下の List 2)
『111 Sullivan Street』。 このアルバムに使ったのは、ギブソン・バ-ドランド[2] (右参照)
っていうギター。バードランド
っていうのは一回り小さく、ネックがちょっと短いの。
━━ David T Walker が使っているものと同じですか?
増尾: ああ、彼が使ってるかも分かんない。でもね、あれは結構使っている人いるんだよね。それでね、バードランド[2] だけ僕は今、持ってないの。っていうのは、カリフォルニアにピーター・スプレイグ(Peter Sprague)っていうギタリストがいるんだけど、彼がちょうどNew Yorkに来ていた時、ヨーロッパへ行くのに自分のギターが壊れちゃったっていうんで、このバードランドを貸してあげた。そしたら、しばらくしてヨーロッパから電話がかかってきて、彼の仕事が終わった後でそのギターを買いたいって人がいて、「売ってくれないか?」って言うんでね。その頃、僕は、そのギターを弾いていなかったし、じゃあいいや って、売っちゃったの。お金もなかったしさ。人に売ったっていうのは、そのギターだけなんだ。ほとんど自分のギターを人にあげたことはないから。今、考えてみると「ああ、持っていればよかったな」って思ってたギターなんだけど。
━━ 惜しいことしたわけですね。
増尾: うん。だから、あれはもうありません。
それで、『Sailing Wonder』。これはギブソン・レスポール・スタンダード[3] かな?
━━ ちなみに『24』で使われていたギブソン・レスポール・カスタム黒[4] はまだお持ちなんですか?
増尾: これもね、人と交換しちゃった。この黒のを人に譲って、そのお金でレスポールのスタンダードのチェリーサンバースト[3] を買ったんだ。59年モデルで、結構ポピュラーなモデルなんだよね。
━━ 59年だと、お高いですよね。
増尾: うん。
それで、『Sunshine Avenue』が...グレコSE-1000T[5]? そうかもわかんないな。
━━ グレコのカタログがあったんで調べたら、増尾さんの使ってらしたのは、ピックガードがシルバーで独特なものでしたね。
増尾:
そうそう、友達に譲ってもらったギターなんだよね。僕はあれからピックアップなんか
変えちゃったから、もうオリジナルじゃないんだけどね。でも今だにこのギター持ってます。『Sunshine
Avenue』の時は、ほかにレスポール[3]
も弾いてるけど。それと、ギブソン・ジョニー・スミス[6] も弾いてる。
『Good Morning』は、ヤマハSG-2000[7]
とグレコ[5]、そうだね。レスポール[3]
も弾いてると思う。
━━ メインで使用していたのはSG-2000でしたか?
増尾: SGがメインだったかな~。そうかもわかんない。
━━ ヤマハのSGは、増尾さんが楽器屋さんへ行って直接買われたものなんでしょうか、それともヤマハから話があったんでしょうか?
増尾: 僕が行ったの。浜松のヤマハに行って、自分の欲しいやつをピックアップしたんだよね。あの頃はヤマハをエンドース(endorse) してたから、ヤマハから頂きました。
━━ 増尾さんの手元にあったSGっていうのは合計で何本あったんですか? 『Finger Dancing』のステージ写真には、もう一台スペアであったみたいですが?
増尾: 2台だ。うん。赤いやつと黒い(ヤマハ SG-2000スペア[8])やつ。真っ黒と、赤。
━━ 両方ともSG2000でしたか?
増尾: うん、2000、そう。今でも持ってます。ちょっと水に浸かっちゃったりしたんだけどね。
━━ ピックアップは変えられたんですか?
増尾: そのまま。
(リストを見ながら)
これ、そうだよね...そうだね...
━━ 調べたリストをチェックされてると、何か試験やってるみたいですね...
増尾: うん、ほんと。
━━ 『Mellow Focus』で使用されたギターは、どんなものだったんでしょうか?
増尾: うん、そうそう、こんなの(ヤマハ SA-1200[9])も弾いてる、この時。でも、これもやっぱりSG[7] も弾いてるし。レスポール[3] も弾いてるかもわからないな、あれは。
━━ 『MASUO』では?
増尾: これはES-175[1]
だけじゃなくグレコ[5] のギターも弾いてる。
その後ね、ギター・シンセサイザーのピックアップつけたの。ローランドのギター・シンセサイザーのピックアップを付けて、今でも付いてるかな?MIDIで他の音出すために。結構あの時あれ使った。
━━ ピックアップはネジで留めてたんですか?
増尾: いや、テープで。両面テープみたいなやつで、こういうふうにくっつけるやつ。(マジックテープを剥がす手振り)
━━ リモートコントローラーは、貼り付けてたんでしょうか?
増尾: うん。そう、なんか、こう後ろの所にコントローラーが付くようになってるんだよね。外せるし、付けられるし。古いやつだよ、結構。
━━ では、結構初期のものですね。
増尾: うん。けっこう初期。
━━ 遅れませんか、MIDI?
増尾: 遅れるよ、うん。どんどん遅れるよ。(笑)
━━ じゃ、あまり使われなかったんですか?
増尾: いや、でも結構、使ったけど。
次の『Acoustic Duo』。これはねえ、全然あの表紙のギター(ES-175[1])は使ってないの。あれは全部、ペンサ・サー[10] っていうギター。
━━ それは、ニューヨークの「シェクター」の中にあった ペンサ・サー のお店で買われたんですか?
増尾: そう、これは、Rudy's っていう店。日野さんの息子のマサノブっていうのが前にそこで働いていたんだけど、もう日本に帰って来ちゃったみたいだけどね、彼がネックなんかやってくれたんじゃないかな。もう一人ね。チャック・ローブ(→ Chuck LoebのHP) っていうギタリストがいて。チャックが先にそこで作ってもらって、「ああ、いいな ~」って思ってね。それで、そこで頼んだんだ。
━━ 結構、ストラトに比べてボディーが細いから、持ちやすくてコンパクトじゃないですか?
増尾: そうだね。それと僕は、ナットで留めてあるやつ。なんていうんだっけ?
━━ フロイド・ローズ。
増尾: うん。ほかにブリッジも留めてあって。あれ(フロイド・ローズ)もちょっと面白かったから。
━━ 弦を変えるの大変じゃなかったですか?
増尾: うん。大変、大変。それで僕はその頃、ピックアップの中間みたいな音が面白かったから、それで随分弾いてたね。
━━ 色は何色ですか?
増尾: 赤。エンジ系統の赤だね、真っ赤じゃなくて。
『Acoustic Duo』は全編ペンサ・サー[10]です。
それで (リストに戻って) ...うん、そう、
『A Subtle One』もペンサ・サーだよね。 ただ、『A
Sublte One』が違うのはね、僕はこのレコード全部指で弾いたの。ピックを使わないで。
━━ え!!
増尾:
レコーディング始めた時から、どうも(ピック使用の)音が気に入らなくてね。もう、どうしようもなかった。
僕は昔、ウエス・モンゴメリーみたいに親指でずっと弾いてたのね。だから、その奏法に戻したら何かスッキリしたんで、あのときは全部そういう感じで弾いちゃったんだよね。
次の 『Just Like Old Times』、そうね。これはレスポール[3]。
それで、『Are You Happy Now』は全部レスポール。
━━ えっ?! レスポールなんですか?!
増尾: 表紙はだからあの~。(『Are You Happy Now』のジャケットにレスポールではなくES-175の写真が使用されていること)
━━ 裏切っちゃいましたね。
増尾: (笑)...っていうのはね、ある時期 (フュージョン時代)、僕はものすごくでかい音でやってたじゃない? バンドものの音はすごくでかかったからさぁ。 あのオルガンの時も音がでかくなるんじゃないかと思って、レスポールでやってたんだけど。結局、そんなにでかい音で弾かなかったの。それで後で考えてみて、それくらいの小さい音でやるんなら、やっぱり箱のギターを弾いた方がいいなぁと思ってね。レコーディングが終わってから、またこのギターを引っぱり出して弾き始めたの。
━━ それで表紙がああなったんですか。
増尾: そうそう。写真を撮ったのはレコーディングが終わってから1年くらい後だったからね。その時はもう、ES-175[1] しか弾いてなかったから。
━━ ES-175のブリッジとかペグを交換されてますよね。一番最初の『バルセロナの風』の頃から比べて。(アルバム『MASUO』の頃には金属系のブリッジになっている)
増尾: あぁ、そうだね。
━━ それで、またブリッジを木のものに戻されたみたいですが?
増尾: そうそう。こういうギターってさぁ、もう、いろんなとこで雑音があるっていうかね。ノイズがあるんだよね。今だに全部取れないんだけどさ。だから、ほんとはすごくイヤなんだけど。いつか何とかしようとは思ってるんだけど。だからもう余計なものを全部取ってしまったの。これ(ES175)も結局さぁ、なんかこう時々「ミ゛ーミ゛ー」なんて音がするから、ロウをたらしたりとかね、散々やってたんだけど。それでもやっぱりノイズがあるっていうか。それと、 やっぱり、これはねえ、木のほうが音がいいんだよ。今の僕の好みに合うギター。もっと普通の、どっちかっていえばアコースティックかな。だから、オリジナルの木のブリッジはもう、捨てちゃったのかなんだか、見つからないからね。僕の友達が新しい木のブリッジをサッと作ってくれたの、ニューヨークで。
━━ なんか最近、変わってたので、「あれっ?」と思ったんで。
増尾: そうか。それはね、2年前から。だから、ピックガードもね、結局ノイズが 出るから全部取っちゃったんだよね、余計なものは。 僕は今、ボディーにあまり触らないような奏法をしているから、あってもなくても同じだから...と思って取っちゃった。でもね、今でもまだ、ちょっとノイズがあるの。たぶん、このピックアップの裏の方かどこかがね。なんか...絶対こういうギターって、なんかあるんだよね。散々、もういじくったりしてるんだけど、何か、どこかがちょっと。
━━ 古いものですからね。このES-175は60年代のタイプですか?
増尾: うん、これは60年代だと思う。僕が一番最初に、大学に入った時におばさんに買ってもらったギターなの。その前は、もちろん他のギターを持ってたけど、こういう、ちゃんとした良いギターってなかったから。でも、うちのおばさんがお金を出してくれ
て、うちの親父が銀座の山野に行って買ってきたんだよね。
一時期、僕はこのギターを弾いてなかったんで、銀座に店を開いていた歯医者さんの友達に長い間貸してたんだ。で、またある時期弾きたくなったんで、引き取りました。彼はすごく大事にしてくれてたんだけど、こういうぺグ類とかは、全部古くなっちゃったから取り替えたんだよね。フレットも全部一回やりかえたかな。
━━ ぺグは、グローバーですか?
増尾:
じゃないかな。うん。僕は、あまりそういうのにこだわりはないからさぁ。
フレットも、また結構減ってきちゃってるのね。
━━ じゃあ、また交換しないと駄目ですね。
増尾: うん、結構、最近よく練習してるからさあ。そうするとフレットが減っちゃうんだよね。だからまた、フレットをやり直さなくちゃならないかもわかんない。
インタビュー2000 → 続き (2) スタジオ洪水事件
[ < インタビュー目次] | ▲ Scroll to Top |
Home | Guitarインタビュートップ (←Web検索でいらした方はトップから) | 増尾好秋Webサイト |