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●2/19 (日) 東京 高円寺Jirokichi JAZZに乾杯 2006 増尾好秋 (from NY) スーパーセッション
増尾好秋(g)、峰厚介(ts)、渋谷毅(p)、鈴木良雄(b)、岡田勉(b)、
渡辺文男(ds)、 村上寛(ds)、(本田竹広)
ゲスト:チコ本田(vo)、荒井ABO誠(ディジュリドゥ)●2/20 (月) 横浜 APPLE 海老原淳子NYレコーディング記念ライブ
増尾好秋(g)、海老原淳子(vo, p) ゲスト:中村誠一(cl)
ライブハウスJirokichi の創立記念ライブのために増尾さんが呼ばれて、それ1本だけのためにニューヨークから日本へ来ることを決めたのが前年の11月だった。知らされた私は豪華な出演予定メンバーに興奮したものだ。日本ジャズ界の大御所ばかり。本田竹広さんを含めて8人だった。...年が明けてから本田さんは突然、あまりにも突然、逝ってしまわれた。出演予定者が8人から7人になったところでメンバーが豪華であることに変わりなく、創立記念にはなる。 けれども Jirokichi と本田さんはつながりが深いし、出演メンバーも本田さんとは昔からの仲間だ。創立記念でありながら、併せて本田さんの追悼ライブとなった。
増尾さんがこのスーパーセッションのため久しぶりに来てくれることを喜びつつも、本田さんのことで複雑な思いで当日を迎えた。
↑故 本田竹広(pf)氏遺影とお花とドリンク
ピアノに向かっているのは渋谷さんこのライブの前売り券は発行されなかったので、日曜ということもあり夕方店の前に行列ができた。5時半に整理券が配られ、いったんお店を離れて開店時刻の6時半近くに戻る。店の前は路地いっぱいの人だかりだ。入ると、店内はテーブルが取り払われ、ステージそばにだけ椅子が詰めて並べられてあとは立ち見スペース。たちまち人で埋まった。
ステージを見るとドラムセットは1つ。ということは、2人のドラマーが交代で叩くようだ。最初はヒロシさんが座る。
満員の客にマイクで増尾さんは言った。 「皆さん、こんばんわ。増尾好秋です。今晩はジロキチへようこそ。さっきマコさん(Jirokichi マスターの荒井誠さん)と話してたんですけど、2月1日がジロキチのオープンした日なんですね。1974年の2月1日だそうです。だから、今年で32周年目になります。ジロキチの2月の開店祝いに僕はずいぶん呼んでもらっていて、今回はそれが仕事で(NYから)来たんですけど、皆さんご存知のように本田君のことがあったので。今日は本田君のことを考えながら彼の追悼演奏会ということになりました。…」 本田さんのことはそう話しただけだった。思い出話などしたら、ステージにしろ客席にしろ湿っぽくなってしまったかもしれない。
↑渋谷毅(pf)、峰厚介(ts)、岡田勉(b)
↑村上寛(ds)
[1st Set] ==================
▽ 岡田 b、村上 ds
1. Tenor Madness
2. Small Steps (Y. Masuo)
3. E.J. (Y. Masuo)
4. In a Sentimental Mood
5. Wee (Denzil Best)
[2nd Set] ==================
▽ 鈴木 b、渡辺 ds
1. You Are My Everything
2. Solar
3. Georgia On My Mind チコ本田 vo
4. Be Anything (But Be Mine) チコ本田 vo
5. Wings (Y. Chin Suzuki)▽ 鈴木 b、村上 ds
6. Its You Or No One
▽ 岡田 b、鈴木 b、村上 ds
7. Miles Run (Y. Masuo) 荒井誠 didge
8. Ain't Tell You Nothing But
(Takehiro Honda)
9. Themeこの日のステージは顔ぶれが豪華なだけでなく、客席の熱気にあおられてか、本田さんのことを想ってか、特別なものがあった。Message Board #1927 村上さんの投稿にもあるように、気心の知れたどうしの緊密なインタープレイが聴けて素晴らしいセッションだった。ベースとドラムスは左のリストのように交代。増尾、渋谷、峰さんは全部を通して演奏した。だいたいのステージの流れは以下のような感じ。
1部のメンバーは、増尾、峰、渋谷、岡田、村上の5人。すでに一度、昨年夏に編成したことのある強力なクインテットだ。 1曲目から増尾さんはオクターブをまぜてドライブ感いっぱいのソロ。ソロを回しても小節交換してもメンバー皆すばらしく、対話がはずむ。岡田さんのソロ、色気ある。それにからむギターとドラムスがいい。 渋谷さんはこういうときよく完全に休んでいる。そしていいところで効果的に入ってきたりする。会場が2曲目あたりからもう暑い。隣の席の人も暑いと言っている。もっと薄着になれるようにしてくればよかった。E.J. の増尾さんソロではコードをマシンガンのように敷き詰めたスリリングなフレーズに聴衆歓喜。4曲目 In a Sentimental Mood は峰さんのテナーでスタート。このテナーたまりませんわ。渋谷さんの、琥珀のように落ち着いた輝きのピアノが美しい。増尾さんのソロも素敵...という調子であっという間にセットは終了。 ヒロシさんは終始気合いの入った見事なドラミングだった。
↑鈴木良雄(b), 増尾(g), 渡辺文男(ds)
2部に入って、ベースが鈴木“チン”良雄さん、ドラムスが渡辺文男さんに入れ替わる。この二人と増尾さんは1969,70年頃の渡辺貞夫グループで一緒だった間柄。本田竹広さんのデビューアルバムも当時の渡辺貞夫グループがサポートメンバーになって録音した。今日の峰さんと渋谷さんを加わえた編成は初めてになるけど、すっかり5人が溶け合っている。このメンバーでのセットは曲目も含めてより落ち着いた雰囲気といえるかもしれない。チンさんのベースから始まった Solar などは乙というか、格別の味わい。峰さんの細く絞り出す叫びのようなソロ、渋谷さんのみずみずしい響きに粋な味付け。チンさんのソロではそれに絡むギターのコードとドラムスが絶妙。
↑峰厚介、チコ本田(vo)
3曲目に特別ゲスト、チコ本田さんがマイクを持った。「本田竹広はジロキチが大好きで...やすらぎの場だったんでしょうか。 」「本田が一番最後に歌った曲がジョージアだったんです。」 震えそうになる声をぐっと押さえるようにそう言ってから歌い出した。心にしみる。 もう1曲「これも本田との懐かしい曲です。」 彼女にはきっといろいろな想いがあるのだろうな~。 バックの演奏、間奏がまたしびれる(全員いい!)
チコさんのあと、増尾さんが「チンさんの曲で、本田君がよく一緒にやった曲。Wings」といって演奏。しみじみ美しい。
次にドラマー交代でヒロシさんがステージに戻る。軽快な曲 Its You Or No One を、しばらく休んでいた元気でもってパワフルに叩く。この曲では渋谷さんがソロをオルガンで弾いた。
2006/2/19 Jirokichi セッション
ステージ上の配置※当日の写真はほとんどリハーサル中に大橋氏が撮影したもの。ただし、ゲストのチコさんと荒井さんは本番中に管理人が撮影。
本番中は混んでいて身動きできないのでアングルを選べず、ミュージシャンどうしが重なって見えなかったりする。ゲストは出てくるわ、渋谷さんのオルガンも撮らなきゃで、もうたいへん。 大橋氏と管理人の分を合わせてなんとか全出演者9人の写真が揃った。
なお、増尾さんはリハーサル前半のみ上着を着ていた。次にゲストの Jirokichi マスターの荒井誠さんが、オーストラリア先住民の伝統的な楽器 ディジュリドゥを持ってスタンバイ。岡田さんも再びステージに出てきてベースがツインになる。(下の写真) ディジュリドゥの出す、ガマガエルの声を震わせたような独特な うなり。それに渋谷さんのオルガンが合わさって宇宙的な響き。他の楽器もパラパラと思い思いの音を出して...そのうちギターが、ベースが、ドラムスがコードとリズムを刻みはじめる...うん?どこかで聴いたような...そう、増尾さんの Miles Run だ! この重厚なリズムセクションで演奏するのにぴったりの、ハードなノリの曲。バンドの強烈なリズムに血が騒ぐ。ヒロシさん凄まじい。ベースはチンさんがアルコでギコギコやったりしている。スリリングでエキサイティングな演奏が展開された。この Miles Run をライブで聴くのは久しぶりで、以前に増尾さんの『Are You Happy Now』発売記念ツアーで本田さんと演奏したのを思い出してしまった。
Miles Run が終わったように思えたが増尾さんはまだコードを弾く。いや、もう別の曲だ。ブルージーなギター。客席でアフタービートの手拍子が始まる。ゴスペル っぽいピアノ。わかった、本田さんの曲! Ain't Tell You Nothing But。出だしがアレンジされててすぐにはわからなかった。この日きっと演るだろうと思ってた、本田さんのデビューアルバムに入っている名曲だ (アルバムに印刷された曲名は Ain't Tell You A Good Way But)。 渋谷さんのピアノが一瞬、本田さんに似て聞こえる。ベースどうしのかけあいが楽しい。皆 楽しそうに演奏しているんだけど、胸が締め付けられて泣けてしまった。
拍手が長く続いたが、すでに2部だけで1時間半を超えておりアンコールは演らず。
本田さんの追悼会でもありながら、Jirokichi 32周年を飾るにふさわしいライブだった。
増尾さんやっぱりカッコよかった~ (K記)
↑渋谷毅(org)
(ピアノの上に重ねられたオルガン)荒井誠(didge), 峰厚介(ts), 鈴木良雄
↑岡田勉, 鈴木良雄
2部最後のほう
Miles Run は
こんな顔ぶれ(↑→)。
《ステージ終了後
に出演者全員で》
向かって左から、
荒井誠
岡田勉
増尾好秋
渋谷毅
渡辺文男
(遺影 本田竹広)
チコ本田
鈴木良雄
峰厚介
村上寛
※打ち上げのもつ鍋は、なんと生前の本田さんが博多から注文されたものだそうだ。本田さんはこのセッションで旧友が集まることを、きっと楽しみにされていたのだ。せっかくなので私もありがたくいただいた。とっても美味しくて、けど何とも言えない気持ち。 本田さんの葬儀から1カ月。皆、静かに本田さんのことを想っているようだった。
横浜アップル:
横浜市中区弁天通 2-34-2-101
Tel: 045-641-3396
すぐ上の見出し「レコーディング記念」は、この記事を書くにあたって勝手に付けた名前。 どうせなら、告知のときからそう書けばよかった... そうです。昨年9月、海老原淳子 (vo, p) さんが増尾さんプロデュースのもと、ニューヨークにある増尾さんのスタジオでレコーディングしてきたのです。それで増尾さんの来日ついでにこの二人のデュオライブということになったわけであります(ちなみに海老原さんのレコーディングに増尾さんはギターでは参加されていない)。 そのレコーディングは、中村誠一さんが海老原さんを増尾さんに紹介したことで実現したものだ。そんなこともあって、この日お店には誠一さんも見えていた。中村誠一(cl), 増尾好秋(g), 海老原淳子(p)
横浜アップルは20席くらい。美人のお姉さんスタッフが何人もいるお洒落なお店(なので男性客には料金もそれなり)。美人ママ洋子さんも、海老原さんがレコーディングしたとき誠一さんと一緒にNYへ行ってきたそうだ。
この日のステージは、レコーディングにまつわるトークをまじえ、レコーディングした曲を中心に演奏した。
海老原さんを初めて聴いた。私はボーカルについてはあまりにも知らない。ここから先はあくまで極私的な感想になってしまうけど、彼女のボーカル、ひと言で言えば気に入った。彼女のホームページに「パワフルでパンチの効いた歌声」「ハスキーヴォイス」などと書いてあって、実際その通りなんだけど、想像していたより透明感があるな~と思った。癖がない。声の抜きとか英語の発声が自然。声が気持ちよく前に出ている。音程とかリズムもすごく安心して聴ける。パンチを効かせる声も小気味良い。1曲目はインストルメンタルで、ピアノとギターのデュオだったが、以降、私の聴けた2部の最後まで彼女のボーカルをフィーチャー。Simetimes I'm Happy とか、My Fair Lady からの曲 とか、オリジナル曲などを。初共演のお二人は互いの音を注意深く聴きながらフロントとバックを交替しているようだ。増尾さんは軽く流すよう巧みにコードを刻んだり、ピアノ相手なのでギターでベースラインのように弾いたり、ときにはのびのびとしたフレーズを歌わせてもいた。
2部では中村誠一さんが、おなじみのサックスではなくクラリネットで参加。小さなお店なので生音で、とってもいい感じだった。客席からボサノバのリクエストがあり、How High the Moon をボサノバのリズムで。海老原さんが歌うと、増尾さんもスキャットを披露してくれた。
海老原さんはこのライブの2日後にCDジャケット用の写真も取り終えたとのこと。中味も外装もどんなアルバムになるのか興味津々。発売が楽しみだ。(K記)
中村誠一(cl) (ゲスト)
増尾好秋(g), 海老原淳子(p)
海老原淳子(p)
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