NYの増尾好秋から
A Day In The Life with Phil Woods (2007/3/22) Page2/5

 僕がギターを弾き始めて間もないあの頃、日本中エレキギターブームに突入していました。僕はジャズギターに没頭していたのでベンチャーズみたいなギターには全く興味がなかったんですが Beatles を境に Jazz 以外のロックギターもいいなと思う様になっていったんです。Beatles の音楽にはカッコ良さと同時に内容、深さが有ったんですね。自分と同じ世代の若者がやっている彼らの音楽は直に感じるし共鳴する事が多かった。そうすると今まで脇目もふらず好きだった Jazz が一歩離れて大人の音楽だったんだなと感じる様になりました。Pop やロック音楽、特に Beatles の出現によって若者の文化が大人の文化と対等にぶつかり合う様になったんですね。今まで僕の中に有った "Jazz 最高" の図式が崩れて来た訳です。アメリカの Jazz 界にもその波が押し寄せたんですね。 Wes の A Day In The Life はあまり感心しなかったし自分も含めてJazz ギタリストがやるロックは格好悪い。そんな風に感じる様になって新たに自分のギター、音楽を求める旅が始まりました。  僕にとって Beatles は僕のなかにあった Jazz では表現出来なかった気持、可能性を引っ張りだしてくれた、別の世界に目を開かせてくれたすばらしい存在だったんですが、あれから40年経った今、歴史として顧みると、Beatles 出現によって Jazz はそれまでの地位から蹴落とされてしまったし二度と時代の先端をいく音楽ではなくなってしまったんですね。だから Jazz ミュージシャンにとって Beatles を始めとするロック音楽は言ってみるなら敵みたいな音楽なんだと思うんだけれど、物事は必ず変化していくもの、同じ所にとどまっている訳ないんだからこれからも音楽どうなっていくんだろうと考えると面白いね。とにかく Jazz ミュージシャンにとって Beatles とは Love and Hate 関係なんだと思います。これはとっても深い話しだから誰か論文でも書いて下さいな。

 話が戻って、今回のプロジェクトの音楽的な所でのプロデューサーとしての挑戦は歌なしのインスルメンタルでいかに原曲の良さを出せるかという事。 もう一つは Jazz Musician にありがちな複雑な方向に行かない様にしつつ曲を面白く料理する事。 シンプルな部分でBeatles の音楽を楽しむ事を心がける事でした。

 曲の振り分けは原則的に、大きく分けて ピアニストの Will Boulware, Gil Goldstein, Benny Green, Steve Kuhn, Bill Mays, Mark Soskin、ギタリストの Adam Rogers 達のバンドを中心にしてそれにゲストソロイストとしていろんな人に参加してもらうという手を取りました。

 参加したギタリストは Peter Bernstein, Romero Lubambo, Adam Rogers, Mike Stern 他。 僕は立ち会わなかったのですがロスアンゼルスで Lee Ritenour も数曲録音。  Dave Sanborn が参加した曲は彼の都合で自分の所で Gil Goldstein と二人でレコーディング。そのトラックに後から Will Lee と Steve Gadd のリズムセクションをかぶせました。
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