増尾好秋から


(▼テロ事件のあった時はマンハッタンのダウンタウンにいて、その後ペンシルバニアのほうに移動してからメールをくださいました。)
 
News from America 2001年9月16日

みなさん今日は !
New York が大変なことになってしまって多くの知人や友達から Tel や E-mail をもらいました。
ぼくたちだいじょうぶですよ。心配してくれてありがとうね。本当に心から感謝しています。
今、僕達はマンハッタンを抜けだして田舎に来ています。

その朝僕はぐっすり眠っていて Shirleyに起こされるまでまったく気がつかなかった。彼女は外があまりにもうるさくて目が覚めたので、さっそく TV をつけてみると煙を噴いている World Tread Center が映っていて、よく見てみると横に Live と書いてあるのに気がついてはじめて窓の外を見たそうです。
ぼくたちの住んでいるアパートは窓が南に面していて WTC の上 1/4 位が見えます。ベットルームのカーテンをいっぱいに開けて寝ぼけ眼で見ると確かに目の前で WTC が黒煙を吐いている。TV は飛行機事故だと報じていたと思う。
とにかく空気の澄んだ気持ちのよい朝で太陽が WTC に反射してキラキラ光っていた。半分まだ夢の中にいるような気持ちで眺めていました。なんて所にぶつけるのだろうドジな奴だな〜なんて考えながら。すると突然横の方から飛行機が飛んで来て何やってるんだろうと思った瞬間に WTC のもうひとつのビルから火が吹き出る。直後にドーンと音がした。
目の前で今起こった事が一瞬信じられなくて、又別の一機が突っ込んだんだって事を自分に言い聞かせる。TV もアレッて感じで最初はだれも信じられなかったのか誰も何も言わない。
これは事故なんかじゃないテロリストの攻撃だ、危機感でいっぺんに目が覚めたよ。それからはすっかりTVにかじりつき。ますます街全体が異常な騒音につつまれていく。ペンタゴンにも落ちたニュースが入る。もうメチャクチャだ。
その日はお昼から友達の recording session が予定されていたのですがそれどころではないのでキャンセルの Tel をいれる。留守電にメッセージを残す。(後で知った事ですが友達はWTC のそばにあるアパートに住んでいたのですぐに追い出されてNew Jersey に避難、今だ住んでいたところがどうなったのかわからないそうです。)
最初のビルが崩れてしまった後からビデオを撮り始めました。テープが10分位残っていたので窓からこんなふうに見えたんだっていう記録を残すつもりでね。
昨夜始めてそのビデオを見て涙が出そうになった。
僕は1971年から New York に住み始めましたがそのころWTCはまだ3/4位しか出来ていなかった。設計者が日本人ということもあってとても誇りに思っていました。ドラムの村上寛やケメコ達と住んだロフトが フランクリン street 。WTC から10ブロック位の所だった。Shirley と結婚して住んだのがトンプソン street 。毎朝少しずつ上に上にと出来上がっていく WTC を見上げていたよ。
次に引っ越したサリバン street 、そして今住んでいるウエストハウストン street と、考えてみるとずっと WTC の眺めがいい所に住んでいたんだな〜。と少し感傷的になってしまいました。
マンハッタンに通じるトンネル、橋はすべて封鎖、地下鉄はじめ空港もすべてストップ。外に出てみると 6th Avenue はダウンタウンから歩いて来た人達、見物人とポリスカーや消防車でごったがえしている。なかには灰をかぶった人や車も目に付く。幸い風が西から東に吹いていたので近いのにまったく煙も来ないしいい天気で現実離れしたシーン。ただダウンタウンを見ると山のような煙がたちのぼりそこにいつも見慣れていた WTC のビルディングがもうないんだよ。時々空軍の F-16 がマンハッタンの上空を飛んでいる、道端にすわりこんで泣きながら話している人、シヨットガンなどで武装したポリスが街角に目立って多くなって来る。僕が住んでいるペンシルバニア州の家から100マイルも離れていないところにも飛行機が落ちるし、夜中だというのに日本から心配して電話がかかって来る。

こまかい被害の内容はみなさんすでに知っていると思いますが勇敢な消防士、警察官、自分を捨てて人々を助ける姿にアメリカ中が心を打たれ、人間のすばらしさに感動しています。
しばらくするともう少し落ち着いて通常の New York City にもどるんだろうけれど、これで米国全体が変わってしまうのかな。
横っ面を張り倒されて目が覚めた様なアメリカですがそれ故にか今まで感じられなかった強い団結感を感じるよ。
人々が真面目になり、やさしくなってかつてのアメリカのよかった部分が又もどって来たみたいな雰囲気です。

とり急ぎ、

MASUO

←以前の文   →次の文
ケータイ版Home